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「 あの日のキミは、今日のワタシ」
「 え?ヨネズケンシ?」
運ばれてきたばかりのコーヒーに早速手を伸ばして思いの外の熱さにアチチ、、、と指を引っ込めながら
今ほど若き友人の発した単語を思わずおうむ返しにききかえす。
完全にわたしの脳内変換では、ヨネズ=米酢となりなんだか凄まじい違和感だ。
「 え?!まさか知らないの?」と目を剥く友人を見てこちらが驚く。
え?そんなに??
喫茶店には客は私たちだけ。
店内に飾られた得体の知れないファンシーな花の飾り物、壁にかざられた武者小路実篤風のカボチャの絵の色紙、タバコのヤニでややきばんだガラス、レースのテーブル掛け、カウンター内の昔美人、そしてつけっぱなしのテレビ。
それはまさにカフェではなく完全に喫茶店と呼ぶべき存在である。
流行りのスタイリッシュなカフェも好きだが、たまにはこんな懐かしい店には入りたくなるもの。
先程その喫茶店のつけっぱなしのテレビから流れていた歌。
なんだかちょっと懐かしいような新しいような、聞いたことがあるような、、、とにかくカフェよりもら喫茶店な曲であった。
我が家にはテレビがない。
そのためか、私は世間の流行にに疎いらしい。
特に歌謡曲や流行りの曲にはめっぽう弱い。
それで、ちょっとだけたずねただけなのだ。
10歳年下のシティガール( !?)な友人は、コスメもファッションも人気のスイーツも、いつも流行りのものを私に教授する。
だからたずねただけなのよ。
「 あれ?この曲なんだっけ?」
そうしたら冒頭の反応である。
へんなタイトルだと思ったら、アーティスト( 私が歌手とよぶソレを彼女はアーティストとよぶ)の名前であった。
そして、ヨネズではなく米津だそうだ。
友が示したスマホの画面の先には米津玄師との文字。
なんだか凄まじく強そうだし、字面だけで見たらなんだかすごい達人感である。
しかしまさしくタダモノではないらしく、ここ数年ヒット曲を飛ばしまくっている凄まじい人のようである。
なんだか懐かしいかんじの曲であったが、まだ米津某は若そう。
「 で、タイトルは?」やっと飲める温度にまで落ち着いた花柄のコーヒーカップをもちあげる。
「 パプリカ! 」
「 パプリカ??パプリカって、ピーマンの?」
「 しらなーい。」
「 まじないかな?じゅもん?」
「 さあ」
友はそれ以上教えてくれなかった。
コーヒーはまずまずであった。
なつかし系喫茶店のコーヒーというのは、だいたいまずまずなのである。
そしてやたら薄くて熱い。
夕暮れ帰り道、ゴソゴソとスマホをとりだし、文明の利器にてヨネヅケンシ パプリカ と検索。
イヤホンをつないで流れ出したその曲は、わたしを夏休みのばあちゃんちにタイムトリップさせた。
子供の頃、夏の夕方。
1日はとてもとてもながくて、1日の終わりの夕暮れ時ですらこれからまた何がはじまるかとワクワクしたものだ。
よーし!
懐かしさと共になんだがわくわくむくむくと元気がわいてきて、思わずスキップをする。
スキップ、まだ、やれるじゃん。
「 君を忘れない」というパプリカの花言葉からこの歌ができたのだと、インターネットが言っていた。
わたしの場合、「 キミ」はきっとあの頃のわたし。
毎日ワクワクドキドキで元気いっぱい、夢と基本を胸にスキップしていたわたしだ。
さて!明日も張り切っていこうじゃないか。
今回ご紹介の曲はこちら
2018年8月15日発売 米津玄師 MASTERSIX FOUNDATION