師走に入り佐倉も走っていますが、何かと慌ただしい年末…皆さま如何お過ごしでしょうか。
先日はラグビー日本代表ONE TEAMパレードが開催され、ONE TEAMは今年の流行語大賞にも選ばれて!これでラグビーワールドカップも一区切りかと。 そんなタイミングで、今回はラグビーワールドカップ×歌・伝統芸能(後編=レッスン特別編)として、皆さんに活用していただけるヴォーカルレッスン的な内容でお届けします。
私は日頃、老若男女・プロアマ問わずいろ~んな方にレッスンをしていますが。 これまでのレッスン歴・芸歴に関わらず、歌はまずこれに懸っています。
「自分でテンションコントロール」! ヴォーカルは自分の呼吸が・身体がそのまま声に・楽器になるので、「できるかなぁ」とか「恥ずかしいなぁ」と躊躇していてはうまくなりません。
ピアノに指を置けばとりあえず鳴る。楽器が鳴ってくれるのなら恥ずかしくない。 でも、ヴォーカル=自分の声で歌うとなると、途端に皆さん恥ずかしくなるようで。
シャイな人がせっかく素敵な声を持っているのにギクシャクして歌えない、芸歴的に結構なキャリアな方でも考え過ぎてイメージ通り歌えない、というの、実はよくあるのです。
でも、皆が皆、楽器を弾きますか?弾かないでしょう? でも、声は普段から出してるでしょう?不思議なものです(笑
そこでまず、ラグビー観戦で皆さんがしていたことを思い出しましょう! レッスンで皆さんから最初に相談を受けるのってだいたい
『大きな声を・高い声を出すにはどうしたらいいですか?』
→ さぁ、松島選手や福岡選手がボールを抱え、トライを決めそうな勢いで猛ダッシュをしています。 「いけー!」→ トライ決めました!「キャー!ワー!」 …これで大きな声と高い声、出ましたね?
『歌いだしで声が擦れるんです』
→ あ、我らがキャプテン、リーチ・マイケル選手がボールを取りました! 会場中に響く唸り声 「リィーーーチ!」…この発声で8割方 大丈夫です。
え?雑?笑 歌の冒頭・Aメロってだいたい低いので。そして「リーチ」のおかげで声をのばして母音がしっかり鳴るので。 ね?笑
『リズムに乗れないんです。』
→ ハカ、しちゃいましょう! ハカは「戦いの前に自らの力を誇示し相手を威嚇する舞踊」…いわゆる非日常。 その非日常のテンションにならないと、物語を奏でる歌のテンポ・リズムもやはり、乗り遅れるのですね。
幸いJ-POPの楽曲のほとんどは4拍子です。 左右の足、ちょうど2本なので。交互に踏めば4拍子取れちゃいます。
『ビクトリーロード、途中から苦しい!』
→ そう、時にはカラオケなどでなく、アカペラで歌うことがあるかもしれません。 今大会の応援ソング「ビクトリーロード」や、日頃だと例えば「ハッピーバースデー」だとか。 すると、「思ってたよりメロディの音程が高くなって大変」とか「どんどん速く歌ってしまう」が、アカペラあるある かと。
実際に、前回も話題にした《君が代》の独唱は、プロの歌手でも相当に難しく緊張すると言われています。
私はドイツにて1万人のアリーナで、いろんな国から集まった方々の前で君が代を独唱したことがあります。 海外では君が代が日本のナショナルアンセムであることがより一層感じられ、あの曲が持つ厳かな深さは歌い手には恐ろしい曲だと、畏敬の念を持ちながら心を込めて歌いました。
…と小難しく書けば美しいかもだけど、実際には「最初の一音目大事!ゆっくりゆっくり間を取って…」と。蓋を開けてみればやっぱり同じ人間なので、こんなです 笑
そんな君が代も例に漏れず、楽曲のほとんどはだんだん盛り上がる=メロディの音程が高くなっていくように起↑承↑転↑結↓が盛り込まれています。
なので、最初うっかり高い声で歌いだしちゃうとそりゃもうあとが大変…今回のワールドカップ期間中に苦しそうな「ビクトリーロード」を何度聞いたことか(笑 逆算して歌いましょうね!
ラスト。
『人前で歌うと緊張してガッタガタになるんです…』
→ 田村選手のキックです! 会場だけでも数万人、画面越しだと世界中が固唾を飲んで見守るあの静寂の時間…。 想像を絶するほどの物凄い重圧だと思うのですが、その中で あのメンタルと物理的コントロールは超人技! 我々もあの集中を以てして歌えば緊張しません!
え、無理?では… あの重圧に比べたら、なんなら音程やリズムがズレてたっていいじゃない♪ ラグビーのように勝敗があるわけでも、手術のように人の命が懸っているわけでもないのだから。
歌は正確でも楽しくなさそうよりは、少々ズレてたって楽しそうだったり心がこもっている方がよっぽど人の心に届くし自分も気持ちよかったりするから!
…え、雑?笑 でも実際、ラグビーワールドカップで海外から日本を訪れた外国人の方々が沢山いたわけだけど、日本より開放的な国民性で、賑やかに歌い踊る姿を見かけたり、楽しい交流の時間をもった方も多くいたのでは。
江戸しぐさ…島国日本では日頃大きな声は人の迷惑になるという配慮を持ち、あまり感情も表に出さないのが良しとされる一面が。 一方海外では、大きな声と表情で意見も感情も表そう! 歌うときにはそのくらい(海外へ)行っちゃってよいんだと思います。
したら緊張なんて吹っ飛びます。 歌うとストレス発散になるというのは、こういうとこかなと。
まとめ
というわけで、いくつか挙げてみましたが♪ 私は「ボイトレ」という言葉をあまり使いません。
声に関しては、トレーニングで付け足すことよりも、すでにその力は備わっているのに発揮できていないことの方が多いから。余計な力みや緊張を取り除く、自覚を促す、といった感じかな。
というわけで、歌うという非日常には、今回のラグビーワールドカップという非日常が多くのヒントをもたらしてくれました。
でもね、歌うようにご機嫌に過ごすのが“日常”になったら、もっと明日が楽しいね。 そんな風に願う佐倉なのでした。
次回は、近々リリース予定の私の新曲について書かせてもらおうかと。
どうぞよしなに。
プロヴォーカリスト 佐倉知佳