私の中のNoise…団欒ファンタジー
皆さまご無沙汰しています、ボーカリストの佐倉知佳です。
不定期連載のこのコラム、月に一度は更新を…と思っていたものの、コアラ主要メンバーがトルコをしばらく旅していたのをよいことにすっかりサボってしまいました。
その間に何をしていたかというと、シングル2曲リリース、とあるショーに出演…と、日々音楽していましたので!ここからまた更新を楽しみにしていてください♪
さて、今日はそんな中 前回の予告通り、先日リリースした新曲について書こうと思います。
まずは今回自分の新曲を拵えようと相成った経緯を。
クラシック出身でショーやミュージカル・映画の歌入れということをしてきた私は、“歌い手”として与えられた曲・役割りの中で歌うことを選択してきた歌手でした。
言わば兵隊。求められている役を忠実に表現しようというアプローチで歌ってきたので、こだわりはあれど自我は出さず。しかもソプラノ=f分の1の揺らぎ・癒しの歌声という宛がわれたコンセプトが当初あったので、いかに優しく美しく歌うか…と。光と影の、光の部分ばかり歌ってきました。
しかしある時。とある企画でプロデューサーさんが、「佐倉知佳の歌声が地球を白く包み込むようなビジョンが見えるよ」と。おそらくとても褒めてくださっているであろうお言葉に、生意気にもちょっとした反論をした。
「黒に白では敵いません。“和を以て貴しとなす”…グレーでなければ」と。
そしてそんな頃から、綺麗でばかりいるのをやめよう、影ももっと歌いたい、と思うようになった。
辛いことがあったとき、綺麗事な励ましの言葉がしんどくて、むしろ同じような境遇を描いた映画だったり歌だったりがしっかりと涙させてくれて受け止められることってあるよね、と。
そこで、いつもお世話になっている作曲家・吉田潔さんを捉まえてのプリプロが始まった。
コード進行やメロディはもとより、好きな音色=ノイジーな気分…をかき集め、巨匠相手に恐縮ながらもあぁしたいこうしたいと。
これは歌を録った後のMIX時にも。プリンス(Prince)のMIXをしたほどのエンジニアさんに今回MIXをしていただいたのだけど、そんな方を相手に随分と我儘を言ったものです…汗
普通は歌を録った後、ブレス・リップノイズ・歯擦音などの余計なノイズはできるだけカットすると同時に、歌詞がよく聴こえるように等いろいろと専門的な処理を施す。
そこを「ノイズを残してほしい」と。囁きも呟きも噛みしめも。どうしても音源化するとそのニュアンスが減ってしまう。(だからこそライヴ・コンサート…是非生に触れていただきたいところなのだけど)それを音源としても全部残したかった。
最終的に、私がイメージし表現したい“Beautiful Noise”の為に通常の作り方に反してまでも意見を取り入れてくださったこのお二人には本当に感謝しています。
そして、特筆すべきは今回の楽曲の肝、歌詞(=ストーリー)について。
今回は作詞を、小説家の山岐信(やまきまこと)さんに依頼しました。
それは山岐さんのとある短編小説を読んでのことだった。
http://kinonoki.com/book/monogatari-factory/factory102.html
主人公の最後の一言を読んで…ドキッとした。
この方なら、私の中にある苦悩や葛藤を理解出来て、それらを文学的に歌詞として昇華し表現してくれるだろう。そう思いお願いした。
当初歌詞は書いたことがないというお話だったけど、ご自身のチャレンジ含めやってみるとお引き受けいただけた。その後はカフェでずいぶんと長い間お茶をしながらお互いのことを喋りに喋り。フィクションかノンフィクションかはさておき、誕生したのがこの歌でした。
ファンタジーな音色にピリっと毒のある歌詞…
ノイズを残したのが正解かどうかなんてわからない。
ずいぶんと暗い物語だなと敬遠する人もいるかもしれない。
それでも、家庭という小宇宙では外からは見えない大変なことが沢山あって、他所では言えないだなんて思っているいろんな境遇・苦悩を抱えてる人が大勢いると思うから。
少しでもこの歌が寄り添えたらいいな、なんて思っています。
良かったら、聴いてみてください。
団欒ファンタジー
https://linkco.re/XhNvFuZP
次回は、先日出演した「ライブ・エンターテイメントEXPO2020」…天岩戸の物語について書こうと思います。
どうぞよしなに。
佐倉知佳