台風19号 ハビギス。如何にも強そうな名前!の台風が猛威を振るい、甚大な被害がもたらされました。

かくいう私も東京在住でハビギスを目の当たりにしまして…こうして無事にコラム執筆に着手できることに感謝しなくてはなりません。
被災された方々、心よりお見舞い申し上げます。

そして、その後発生した台風20号の名はノグリー
……語感って不思議。のんびりで弱そう…笑

私たちヴォーカリストが楽器奏者と違う点は、歌詞がありメロディーに言葉をのせて歌うということ。
当然ながら歌うときに歌詞はとても大切だし、だからこそ常日頃から言葉が持っている音的雰囲気にはとても敏感だったり想像力豊かだったりする。

漢方の名前は武器や必殺技の名前のように感じるし
「麦門冬湯(ばくもんどうとう)」「響声破笛丸料(きょうせいはてきがんりょう)」…シャキーン!
お薬の名前は古代文明の皇帝の名のように感じるし(2世、とか付けると尚更)
「クラリス」「シングレア」「ムコダイン」…キリッ!
魚の名前「すけそうだら」なんて、鱈が照れているように感じるし
 ちょっと困った風に読んでみてください。笑

…あれ、不思議ちゃん過ぎた?
ちょっとなに言ってるかわからない、って感じたら、冒頭は台風の名前の件に立ち返っていただけたらと!

こんな一見 駄洒落とも捉えられそうなことが、実はプリミティブに脳内や心の内に組み込まれていて、として・として聞いたときにとても重要で。
だからヴォーカリストやシンガーソングライター・作詞家は真剣に言葉遊びをしているのである。

もう少し堅く真面目に書くと、渡された歌詞を咀嚼するとき・歌詞を書くときに。
・ 名詞・形容詞・動詞(=重要な単語。それだけを抽出して読んでも物語が分かるほどだから)
・ メロディ内でのリズムや、拍子上のアクセントへの歌詞のハメ方
・ 音程の高低

…あたりの関係性を整理しながら歌う。

プロの作詞家が書いた歌詞=成熟度の高い歌詞は、文法的な統制が成されているだけでなく、歌うのに大変だったり抜け良くしたい高音を確実に発声・発音しやすいナ(N)行・マ(M)行・カ(K)行あたりが当てられていたりと、歌うことにも精通している。
(N・M…鼻歌・ハミングの音でしょう?高音を発声するポジションなのです。)


そこから更に個性的な言葉表現のセンス・個性が光るのだから、やはり名作詞家の先生方はすごいと思う。
ちなみに私は覚和歌子さんの詞が好きです♪

ここで一つ、歌詞に纏わる心に残っているエピソードを。


私が歌手としての仕事をし始めたばかりの頃に、事務所の社長 兼 声楽家の先輩からとても印象に残るアドバイスをいただいた。
『「もののけ姫」のサビ、「悲しみと怒りに」…
かなしみの”か”と、いかりの”か”が同じに聴こえるんだよね。対極の感情なんだから、それぞれの”か”が欲しいな』

…衝撃だった。
それ以来、歌詞の読み取りは興味深く面白くてしょうがないのです。
大袈裟でもなんでもなく、歌詞の世界観を届け楽曲が持つ力を最大限に発揮することは、歌い手としての使命であり義務だから。

という感じで今日は、ヴォーカリストにとって大切な歌詞・語感についてお話しました。


次回は、ラグビーワールドカップに関連するお話をしようかと。
どうぞよしなに。

プロボーカリスト 佐倉知佳