●生のステージで「瞬間」と触れ合おう!

忘れられないコンサートやライブの体験はありますか?
その場の空気感に心を持っていかれた・ミュージシャンのとある一瞬の表情が脳裏に焼き付いているMCが面白すぎてその場を思い出すだけで腹筋が痛い!、などなど。

一期一会の瞬間の連続であるコンサートやライブは、リアルタイムゆえの醍醐味に溢れています。それは全て人が生み出し人が感じとっていること。そこに形はありませんが、だからこそ魅力は無限大

今回は、そんな「生のステージならではの味わい」についてのお話です。

◾️人生で一度きりの出来事だけで出来ています

ジャンル問わず、生のステージは一瞬の連続で成り立っています。

しっかりと作り込まれた再現性の高い音楽スタイルにしろ、アドリブ要素が多いフレキシブルな音楽スタイルにしろ、人が人の前でやっている以上、そこには「思い」が交錯しています

思いは音を揺り動かし、その音は思いとしてその場の全員に伝わっていきます
その連続をリアルタイムで味わえるのが生のステージ

ミュージシャンも、生演奏ならではの空気を感じながらそこに居ます。
レコーディング現場とは違い、時間の流れそのものが表現の基盤。その環境で発するパフォーマンスにはその瞬間毎の感情が投影されているはずです。

その一瞬だけが賞味期限。プレイヤーにとってもオーディエンスにとっても、人生で一度きりの出来事だけで成り立っているのが生のステージです。

◾️オーディエンス × プレイヤー = ∞

オーディエンスもプレイヤーも、どちらも生身の人間。瞬間を共有しているからこそ感じ合えるものは無限にあります。

プレイヤーには人を惹きつける力がありますよね。思いを持って表現している以上、自然なことです。
では、オーディエンスはどうでしょう? ただ受け身でそこにいるだけでしょうか? いいえ、そんなことはありません。
オーディエンスのエネルギーもまたプレイヤーに伝わるものです。

例えば、息を飲むほどに美しい音楽が展開され、会場の皆がそれに引き込まれている時。 客席には手拍子も掛け声も物音も動きも一切ありませんが、無言の一体感がそこにはあることでしょう。それこそがオーディエンスパワー。それはプレイヤーの表現力をより一層高めます

このように、プレイヤーとオーディエンスのお互いの作用により“場の空気感”が作られています。そのエネルギーは無限大です。

◾️ハプニングは何かが生まれるチャンス!

「これは、、やっちまったか…?」的な、オーディエンスもそしてプレイヤーですらも予期せぬ出来事。筆者も経験があります。二曲同時に始まる、など色々(笑)。

曲の進行がズレた・想定外の音が鳴りだした・機材トラブル、などはプレイヤーとしては焦りそうな出来事ですが、そこからどうもっていくか。これが見事に決まれば何か凄いことが起き会場は大興奮!という可能性もあります。 プレイヤーの場の展開力の見せ所でしょう。

音楽的に持っていく・トークで持っていく…、手法は様々あろうかと思いますが、根底には“時間の流れをいかに物語にするか”というものがあろうかと思います。

「緊張と緩和」というのは音楽の構成の上で大きな要素のひとつです。とりわけ生のステージは時間の流れそのものが基盤となり展開構成します。
そういう意味で“ステージ=大きな一曲”と捉えてもいいかと思いますので、ハプニングもそこに当てはまり得る、ということが言えるかと思います。
予定通りいかないことは、ミスではなくこれはもう何かが発生するチャンス。サプライズ到来です!

プレイヤーもオーディエンスも、ハプニングすらも大いに楽しみましょう!せっかくの生ですから!

◾️独特の心地、アンコール劇場!

どの演目よりもアンコールの曲に心を持っていかれた・・、という経験はありませんか?
プレイヤー的に見ても、アンコールは“何かが起こる”確率が高いです。
なぜでしょう? 色々な要素が関係しているでしょうけど、筆者の場合はこう思います。

「終わった直後だから」

そう、その前の曲で、ステージは完結しています。一曲にストーリーがあるように、ステージにもストーリーがあります。どう終わるか。とても重要なことで、筆者の場合はライブやコンサートの曲順を考える際には先ず最後の曲を決めています。 そこにどうアプローチするか、ということを一曲目から進めているのです。

アンコールは、終わったその後に、オーディエンスとプレイヤーという人間同士が創り上げる“場の雰囲気”により、場合によって起こります。決まり事や予定調和ではないので、アンコール無しが最も美しい場合ももちろんあります。

一回完結したのにもう一回演奏がある。 これは特別な出来事ですよね!場の雰囲気も変わって当然。だってもう終わっていますから(笑)。 そこでよりくだけた表情になったりするプレイヤーもいることでしょう。

筆者はジャズの演奏をすることが多く、即興要素の強い音楽スタイルゆえ、アンコールの曲は事前に用意せずその時に決めることがほとんどです。
派手な曲・ゆったりとした曲・長くやるか短くやるか…、などを会場の雰囲気を肌で感じながら考えるのがとても楽しいです。
プレイヤーもものすごく活き活きとしたパフォーマンスになることが多いですし、オーディエンスも今までにない表情を見せてくれたりもします。 まるで“二次会”のような空気感です(笑)

このように、アンコール独特のあの心地はオーディエンスとプレイヤーの気持ちの相互作用によって出来上がります。これこそがアンコール劇場。生の現場でしか味わえないものです!

◾️その瞬間は心に刻まれています。

音楽には物理的な「形」はありません。 ライブやコンサートの会場で味わうのは「時間」です。そして、生である以上そこで味わえる空気は一期一会。その原材料は「その場にいる人のハート」です。

忘れられないステージの様子は、心の中の引き出しに宝物のように納まっていることでしょう。そんな引き出しが心の中にある、ということをちょっと意識しながら、これからコンサートやライブに触れ合ってみてください。さらに宝物が増えてゆくかと思いますよ。 オーディエンスの方も、そしてプレイヤーの方も!

ジャズトランペッター 河村貴之